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2015年06月07日

「あん」という映画を観てきました

「あん」という映画を観てきました
またもやミリタリーの欠片もないブログで申し訳ないのですが、
昨日「あん」という映画を観てきました。
予告篇を観た時になんとなくこんな感じの映画かなあとの想像は
木端微塵に打ち砕かれました。
もちろん良い意味でです。
前もって既にこの映画を観ていた上級射手さんからすごい映画ですよ、と
思いっきりハードルも上がった状態で鑑賞しましたが、
そんなハードルも簡単にクリアしてしまう映画でした。
観終わった時、ふと思いました。
人生の幕が引かれる時に最後に観た映画がこの作品だとしても、
それはそれで良いかなと。帰りの車は超安全運転で帰って来ましたけれどね(^^)
なるべく多くの方々がこの映画と触れ合う事になってくれると良いんだけれどなあとも思いました。
さてここからはかなりのネタバレになりますので、
前情報無しで「あん」を観たいという方はこれ以上読まない方が良いかと思います。


監督は河瀨直美さんと言う方です。
原作はあのドリアン助川さん、今は小説も書いているのですね。
以前は良くテレビに出ておられましたが。
主演は樹木希林さん、永瀬正敏さんです。
冒頭のシーンで、うわあ永瀬正敏老けたなあ〜と思いました。
僕自身あんまりテレビとか見なくなってしまったので10年ふりくらいになるのでしょうか、
この永瀬正敏演じる、うだつの上がらないどら焼き屋さんの店長さんを
樹木希林演じる徳江さんが訪ねてくるところから話が始まっていきます。
徳江さんが雇ってほしいと店長さんにお願いしますが、
役柄も70歳オーバーの設定だと思いますが、
年齢も年齢なのでと断ります。
それでも再び徳江さんが来て、またもや雇ってほしいとの願いを断った時、
徳江さんはつぶあんを置いていきます。
このつぶあんを店長さんが食べてみると、ものすごく美味しくて驚きます。
そこで次に徳江さんが来た時に、ここで働いてどら焼きのあんを作ってもらえますか云々
とここまでは想像しやすい流れですね。
そしてあん作りが始まるのですが、これがまあ当然の流れですが、
とにかく丁寧に丹念にあんを作っていきます。
このあんを作っている時に、せっかくここまでたどり着いた小豆なんだから、
丁寧に作らないと、とか鍋で小豆を煮ている時のぐつぐつと鍋が煮立っている音を、
耳を側たてて聞いている姿に店長さんが質問すると、
この小豆がどこから来たのか、小豆が見たり聞いてきた風の音や川のせせらぎといったものを
教えてもらっているのよ、と答えるやりとりなどが描かれるのですが、
こういったセリフが後々に明かされる事実の後とても生きてきます。
そうして完成したどら焼きですが、やはりあんが美味しくなったと評判になり、
朝から行列ができるほどの繁盛店になります。
そんな中ある日このどら焼き屋さんの女性オーナーさんがやって来て、
なんだか変なお年寄り雇ってるけど、その人ライ病なんじゃないのって噂になっているから、
すぐに首切りなさいよ。と言うような事を言ってきます。
店長さんはかつて酒場のいざこざに巻き込まれて人を殺してしまったそうで、
その時の慰謝料を肩代わりしてくれたり、このどら焼き屋さんで雇ってもらったり
してもらったのがこの女性オーナーさんの死んだ旦那さんで、
その恩義と徳江さんの板挟みになってしまいます。
それでも徳江さんを守ろうと決意したのですが、
世間というのは怖いもので、あっという間に噂が広まったのか、閑古鳥状態になってしまいます。
その状況を悟った徳江さんは自らお店に来なくなり、
ある時店長さんに徳江さんから一通のお手紙が届きます。
とまあ、ここまでで映画の3分の2くらいでしょうか。続きは観てのお楽しみで。
さあ、と言う事でこの作品はハンセン病の方々の苦悩や苦闘といったものがベースと言いましょうか、
ハンセン病患者さんの徳江さんが主役の映画です。
ストーリー紹介するところで敢えてライ病と表記させて頂きました。
ライ病という表記はあまり公開の場では使わないようになっていますね。
僕個人の甘い考えですが、ハンセン病患者さん達の苦しみというのは、
ライ病という病気に誤診された事から生まれた物なのではないかとすら考えています。
と言うのも、ハンセン病とライ病というのは同じ病なのですが、
当時のライ病の認識というのは医療技術の未熟さや国の間違った政策で本来のハンセン病とは
対処の仕方等、全く別の病気の対応の仕方になってしまっていたのではないかなあと思うのですよね。
http://www.excite.co.jp/News/society_g/20120328/Cyzo_201203_post_10252.html
実際の患者さんについてのお話が出ていますので見てもらえたらうれしいです。
さて映画に戻りますが、
このハンセン病の当時の誤った政策等により小さい頃から徳江さんは隔離されて
ずーっと同じ場所で人生を過ごしてきた訳です。
そしてその隔離施設では甘味処のようなお店で働いてきて、
ずーっとずーっとあんを作ってきたのでしょう。
ですので店長さんの所で小豆に語り掛ける、どこから来たの?とか
どういう所から来たの?というセリフには
隔離施設から出る事ができない徳江さんが小豆に語り掛ける事で
ここではない別世界に思いを馳せつつ、ご自身もそこにいるかの様に想っていたのではないでしょうかね。
映画の中では結婚し妊娠もしたけれど、産むのを許されなかったとか、
この隔離施設の人々は死んでも墓を持つことが許せなかったとか
色々と悲惨な事柄が出てきます。
そういった悲しい話も、サラッと実際のハンセン病患者さん達が日当りのいい場所で
5〜6人で楽しそうに何か語り合ってるワンシーンを入れてくれる事によって、
随分と救われる気がしました。あの楽しそうに語らってるワンシーンは最高だったなあ。
籠の中のインコを解き放つとかも良いんだよなあと、
他にも色々あるのですがこの辺にしておこうと思います。
この映画の予告編で樹木希林さんがおそらく最後の主演になると思いますと
語っておられましたが、もっともっと樹木希林さんの作品が観たいなあと思いました。
他にも永瀬正敏さん始めどの役者さんも良かったのですが、
こういった話の作品には絶対に「全く救いようのない悪役」というものが欠かせないと思いますが、
そういった役に臆する事も無く出演し演じた浅田美代子さんと水野美紀さんの演技にも清々しさすら感じました。
役者さんってすごいですね。
エンディングもなんか日本映画っぽくてとても良かったです。
長々と書いてしまいましたが、
とても良い映画だと思います。
それと過去にはこういう出来事もあったのかというのを世に知らしめるのも
映画の魅力の一つでもあると思っています。
多くの方々に観ていただきたい映画だと思いました。
「あん」いかがですか 「あん」いかがですかあ(^^)










Posted by APS小僧  at 00:15 │Comments(2)

COMMENT
この文章だけで、一本の素敵な映画をみたような清々しい気分になりました。
素晴らしい映画評論家ですね。
この「あん」見に行きます。
Posted by しましまじろう at 2015年06月08日 16:02
しまじろう様、
コメントありがとうございます。
このブログを読んで「あん」を観に行ってくださる方が
いらっしゃるのはとても嬉しいです。
ブログでは書ききれない魅力を持った映画だと思っております。
多くの方に劇場に足を運んで頂けたら、
いちファンとしてありがたいです。
Posted by APS小僧 at 2015年06月08日 17:16
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